「『モデル募集サイト』で少女の被害が増加」するのは、「女性の方にも問題がある」などとのたまう「伊勢崎のジャンヌダルク」への怒り

昨日「林氏への反論」を掲載したことで、ようやく「普通のオタクの子に戻れるー☆」などと大はしゃぎしていたら、「林氏への反論」を取り上げてくださった成城トランスカレッジ!さんにて、とんでもないエントリーを発見してしまいました。


群馬県伊勢崎市議会議員伊藤純子:「男女混合名簿」が引き起こすモノ


はてなブックマークを見ていると、どうも「ジェンダーフリー教育」や「男女混合名簿」に関するバッシング記述へのツッコミに流れている感がある。確かにそれも大事なんだろうけどさ。
だけど、私はこの伊藤純子氏の記事について、もっと根本的なところに「寒気」を覚えた。たぶん皆様は分かりきっていることだとは思うんだけど、改めて主張しておきたいと思います。


まず、伊藤氏のサイトの序文を読んでみると、

藤純子です。新聞を読んでいたら「『モデル募集サイト』で少女の被害が増加」なる記事を発見!「女心をもてあそぶ、とんでもない事件」と思いきや、真相は実に情けない、女の破廉恥な挙動に辿り着きます。

まず論理の飛躍がすごい。伊藤氏によれば、「『モデル募集サイト』で少女の被害が増加」しているのは、「実に情けない、女の破廉恥な挙動」が原因なのだそうだ。真相は決して「女心をもてあそぶ、とんでもない事件」などではない、とのことである。
では実際に伊藤氏は、何の根拠を持って「実に情けない、女の破廉恥な挙動」を原因だと断定しているのか、続きを読んでいくことにしよう。

実際に、検索専門サイトに『モデル募集』にかかわるキーワードを入力してみたところ、表示された上位のなかには、不特定のモデル希望者と撮影希望者が情報交換する内容のものが数え切れないほど多く存在し、さらには、このうち18歳未満の少女も対象になっているサイトも複数ありました。少々マニアックな話になりますが、撮影側が制服などのコスチュームを希望したり、または少女側から水着や下着姿などの大胆な格好と報酬額を提示するといった、どうみても誘発的と思われるものばかり…。これに乗っちゃう男性も男性だけど、このようなサイトを見る限り、女性の方にも問題があると思われます。

伊藤氏が「女性の方にも問題があると思われます」という主張の根拠として挙げているのは、「少女側から水着や下着姿などの大胆な格好と報酬額を提示するといった、どうみても誘発的と思われるものばかり」な書き込みなんだそうです。それってサクラじゃないんですか?というツッコミがまず最初に浮かんでくるけれど、市会議員である伊藤氏が書き込みを読んだだけで決め付けているだなんて思えない。したがって思い込みなどではなく、きっと綿密な調査に基づいて記事にしているのでしょう。トラックバックをしておくので、その辺は伊藤氏が説明してくださるはず。たぶん。
まぁ、そんなことはどうでもいいです。書き込みがサクラだろうがサクラではなかろうが、伊藤氏の論理には決定的な欠陥があるのだから。そもそも今回、伊藤氏が取り上げた「事件」とは何だったか、もう一度おさらいしてみましょう。

現実に『モデル募集』という名目で少女を誘い出して少女と性交渉したり、ホテルなどで強引な撮影をしたりする事件が起きています。

実際の事件の内容は、「『モデル募集』という名目で少女を誘い出して少女と性交渉したり、ホテルなどで強引な撮影をしたりする事件」です。「誘い出して少女と性交渉」をしているのは、誘い出した「加害者」だし。「強引な撮影」をしたのも、撮影をした「加害者」です。
一億歩譲って、例えこの「加害者」が「誘発的と思われるものばかり」と(伊藤氏が)揶揄した書き込みに「乗っちゃった男性」であったとしても、「加害者」が擁護されていい、なんて結論にはならないはず。「誘い出して少女と性交渉」をしたのも、「強引な撮影」をしたのも、他ならぬ「加害者」なのだから。もし「少女側から水着や下着姿などの大胆な格好と報酬額を提示」していたと仮定しても、その書き込みが「性交渉」や「強引な撮影」を許すものではないことくらい、小学生でも分かりそうなこと。
続けて以下の記述。

神奈川県警によると、モデル被害はここ数年増えているもよう。統計好きなあの警察が「統計上では表面化していない」として発言を曇らせていますが、少女が事前に金銭授受の約束をしたり、黙ってホテルについていったりするケースが多いため、婦女暴行罪の立証が難しいケースもあるそうです。また親に言えないで、告訴に至らないケースも多いとか。こうなると、男子から金を巻き上げようとした女子のよこしまな考えがこのような結果を生み出した、と言われても仕方がない気がします。

もうムチャクチャ。伊藤氏は本当に市議会議員なんですか?小一時間ほど問い詰めたいんだけど。「婦女暴行罪の立証が難しいケース」があるという事実から、どうやったら「男子から金を巻き上げようとした女子のよこしまな考えがこのような結果を生み出した」という結論になるのかが理解できない。伊藤氏はもしかして、被害にあった子どもたちが「男子から金を巻き上げ」られなかったから、被害届を出したのだとでも言いたいんですか?「親に言えない」子どもたちは「男子から金を巻き上げようとした」から「親に言えない」と言っているとでも?
もし伊藤氏が本当に市議会議員ならば、「統計上では表面化していない」という問題の責任を「被害者」に押し付けるのは慎むべき。むしろ逆に、「表面化していない被害」の問題について、「制度」や「統計」の責任を追求すべきでしょう。
なんて考えていたら、続けて目玉も飛び出すようなトンデモ発言が記述されていて、もう、たまげた。

こうした事件の背景から「お金欲しさのあまり、軽い気持ちで面識のない男と会い、被害に遭ってしまう幼稚な少女が多い」という実態が浮き彫りにされます。

一億歩譲って、被害にあった子どもたちが「お金欲しさのあまり、軽い気持ちで面識のない男と会」ったと仮定したとしても、実際に浮き彫りにされるのは「面識のない子どもに嘘をついて呼び出し、性暴力を犯すとんでもない大人がいる」という実態なはず。子どもたちが「被害に遭ってしま」ったことを理由に、被害者を「幼稚」だと決め付けて非難するという行為は、どう考えても浅はか過ぎ。もう「実に情けない、伊藤氏の恥知らずな言動」と揶揄してもいいくらい。


本当に林氏伊藤氏が市会議員としての誇りを持っているなら、ほんとうに問題にすべきなのは「『モデル募集』という名目で少女を誘い出して少女と性交渉したり、ホテルなどで強引な撮影をしたりする」輩から、市民が「被害者」にならないように対策を立てることなはず。それすらもせずに、「被害者」を「幼稚」「破廉恥」と叩き、「加害者」を擁護する発言を恥ずかしげもなく世界に発信する。そんな伊藤氏には、本当に寒気を覚える。