妊娠中絶は殺人である。――問題は誰が殺されていて、誰が殺しているのかだ。

妊娠中絶は殺人です。

最初にはっきり述べておきます。妊娠中絶は殺人です。
妊娠中絶とは、性暴力や社会制度・周囲からの圧力などによって、
胎児と妊婦自身の一部が殺されてしまうという、
大変許し難く非人道極まりない、史上最悪の殺人行為なのです。

なぜ、妊娠中絶は殺人なのか。

中絶手術を経験した当事者自身が「自分が胎児を殺した」と苦しんでいる、
そんなケースが非常に多いからです。
当事者自身が「胎児」を「命」として認識していること。
中絶が殺人である理由はこれだけで十分である、というのが牧波さんの主張です。

妊娠中絶によって、誰が殺されているのか

まず最初に挙げられる被害者は胎児です。この理由は先述したとおりです。
ですが、胎児だけではありません。
多くの人は気づかないフリをしたまま、中絶妊娠についての妄想を語りたがりますが。
中絶によって殺される被害を受ける*1人間は、胎児以外にも、もうひとり存在するのです。
誰でしょう。ちょっと考えてみてください。


わからなかったら、なぞなぞにしてみましょう。

Q.「胎」児はどこで生きているでしょうか。
A. 母「胎」内

お粗末でした。話を戻しましょう。


母「胎」内に「胎」児を抱える妊婦にとって、
胎児は、妊婦自身の身体の一部でもあります。*2
よって妊娠中絶は、そんな妊婦の身体の一部を殺す行為である訳です。
また、妊婦自身に「自分が胎児を殺した」と自責させる行為でもあります。
つまり妊娠中絶とは、胎児だけでなく妊婦の身体や心の一部までをも殺すという、
恐ろしい、悪魔の所業であるのです。


それでも未だに多くの人は、
「『胎』児は母『胎』内で生きている」ことに気づかないフリをしつづけていますね。
これからも知らない振りを決めこむのでしょうか。

では、誰が殺しているのか

好評のようなので、もう一度なぞなぞに仕立ててみましょう。

性暴力によって望まない妊娠が起きた場合に、胎児を堕胎するのはなぜでしょう。
キャリアを捨てないために、胎児を堕胎するのはなぜでしょう。
学校を退学させられないために、胎児を堕胎するのはなぜでしょう。
出生前診断で、障害を持っていると分かった胎児を堕胎するのはなぜでしょう。


Q.上記の質問すべてにあてはまるもの、なーんだ?

A.中絶の主体(責任)がすべて、「妊婦」に押し付けられていることです。
これは「胎児を堕胎するのはなぜでしょう。」の一句に主語を付け加えて

妊婦が胎児を堕胎するのはなぜでしょう。

こう書き直すとよくわかりますね。


堕胎を引き起こしているのにもかかわらず、
その原因である性暴力が問題にされることは殆どありません*3


堕胎を引き起こしているのにもかかわらず、
女性が妊娠・出産するとき、
同時に女性からキャリアや学歴・生活の基盤を剥奪していく社会制度が
問題視されることは殆どありません。


堕胎を引き起こしているのにもかかわらず、
社会的少数者の人間が障害を押し付けられ、
自立生活の確立が困難になってしまう社会制度が
問題視されることは殆どありません。


中絶で絶えた命は「女性の勝手で生を受け捨てられ」たものではありません。
ひとりの胎児が中絶で命を失ったら、
その責任はわたしたちひとりひとりに課せられるべきです。
どうか、都合のいい責任転嫁だけは慎んで下さい。

そして願わくば

もう、妄想世界のおとぎばなしを語るのは止めにしましょう。

*1:以下に挙げる被害者「自身」は、中絶によって必ず殺されるわけではない、ということを踏まえ、表現を訂正致しました。

*2:だから、中絶手術を経験した当事者自身が「自分が胎児を殺した」と苦しんでいるケースが非常に多いのです

*3:非パートナー間でのもの(多くの人が思い浮かべる強姦)など、一部は扱われることもありますが