おうちに名前がなかったころのはなし
帰ってきたら捨てられてた(追記)
これを読むたびに、
自分の名前を呼んでもらえなかった実家のことを思いだす。
不具者の自分は存在そのものが家族の障害物でしかなく、
近所の人たちの好奇の目が家族に注がれてしまう原因だった。
家族はわたしのことを一所懸命に「ふつう」にさせようとし、
ムリだと分かったあとも「ふつう」であるよう振る舞うことを望んだ。
そうしないと家族みんなに迷惑がかかるから。
彼らはわたしの名前を否定する。
それは甘えだと。
彼らはわたしから、たくさんの名前を奪いとっていった。
そして、わたしもじぶんの名前を叫ぶために、たくさんの迷惑を家族にかけていた。
そのたくさんの罪にも罰が下され、わたしの名前はどんどん消されていった。
このままでは名前を呼んでもらえないと知ったわたしは、非合法的な手段をつかって、
彼らにコントロールされない名前を受け取っていた。
やがてわたしは家をでた。
「かわいそうに、僕のおうちにおいで。かくまってあげよう」
そう言ってくれる人をつかまえた。
お世話になった人たちにお別れのご挨拶をして、実家からとびだした。
居候させてくれた人は、いろんなことを知っていた。
いまのうちにこうしておくと便利だよ、実はこんなことも出来るよ。
彼の話をしんけんに聞き、その通りにしていたら、
いつのまにか、わたしはたくさんの罪を犯した犯罪者になっていた。
犯罪者になったと知ったあとも、実家に帰りたくなかったから
自分の意志で逆らわなかった。
毎日が不安で、死にたくてたまらない。