佐世保の少年は「お父さんは悪くない」と謝った。被害者にではなく父親に向けて。

 長崎県佐世保市で同級生の県立高校1年の女子生徒を殺害したとして、殺人容疑で逮捕された少女(16)の弁護士が31日、少女に関し「父の再婚に反対していた」などとした報道について、「そうした事実はない」とする文書を報道機関に配った。
 弁護士によると、少女は父親の再婚について、初めから賛成していた▽再婚について心情を友達に話したことはない▽父親を尊敬している▽母が亡くなって寂しかったので新しい母が来てうれしかった、などと接見の際に話したという。


むかし、こういうブログを書いた。


「本当に全部ボクが悪い」と自責する子供を健気だと妄想するだけに止まり、条件反射で母親を叩くから虐待の連鎖は止まらない。 - こんぶダイアリー 武藤三法流華睡葬で往きたい人のブログ


もう6年も前なのか。
私のブログとしては派手に炎上したからよく覚えている。
私も自分がいまだに生きていることに驚いたが、
この事件で生き残ったきょうだいはどのようにして生きているのだろう。


6年前のネグレクト事件で、長男が「育児放棄をしていた母親に謝る」ことで許しを請うていたことと、
今回の佐世保高校生惨殺事件の犯人が「女を漁るために自分を厄介払いした父親を庇う」ことでいい子を演じている件はものすごく似ている。


前回のブログから6年経ち、私も発達障害機能不全家族などの知識を得るにあたって色々わかったことが増えてきました。


とは言っても、結局は前回と同じ内容になるのですけれど。

この子はただ、父親に見捨てられたくなかっただけだ。父親に許してほしかったから「自分が悪い」と言ったのだ。
ごめんなさいと謝れば、父親は僕のことを捨てないでくれるかもしれない、と思って。
自分が見捨てられないための方法として、その子が知っていた唯一の方法が「自分の意見を持たず、相手の命令すべてを受け入れること」だったのだろう。
独裁国家や民主主義国家などで国民が苦しい状態の時に「政府に媚を売ることで自分を救ってもらおう」という夢想からはじまるナショナリズムや、人質にされた人間が犯人に媚を売って自分を見逃してor優遇してもらおうとするストックホルム症候群のようなものだ。
この子にとって唯一の拠り所である父親から捨てられることは、完全な孤独を意味したのだろう。
だから、父親に捨てられないように必死に謝るのだ。父親の望むとおり「母が亡くなって寂しかったので新しい母が来てうれしかった」「父親を尊敬している」と、“父親に対して”アピールしたのだ。


6年前の事件の子もそうだが、今回の事件の子も、父親からの庇護を得るために自分の意見を殺し、父親の意向に沿うよう、顔色を窺いながら生きてきたのだろう。

高1同級生殺害:「いろいろあって留学」中学の卒業式後 - 毎日新聞

関係者によると、女子生徒が通っていた中学のクラスは3月の卒業式後、全員が1人ずつ教室であいさつをし、女子生徒はその時に留学について話したという。

 女子生徒は照れるような仕草をしながら「オーストラリアの方に留学を考えてます」と語った。続けて「まあいろいろあるんですけど」と話して教室にいた父親の方を見ながら「それは思うところがあって」とも語った。

 近所の住民によると、女子生徒は幼い頃から活発で、学習成績も優秀。家族の勧めもあってスポーツにも積極的だった。

 だが、県教委によると、昨年10月に実母をがんで亡くし、以降不登校の状態になったという。また、近所の住民によると卒業式があった今春、父親は再婚し、家庭環境が大きく変化した。住民によると女子生徒は「お父さんをバットで殴ろうとしたことがある」と話したこともあるという。

 女子生徒は自分のことを「僕」と言い表していた。

 教室でのあいさつでは、涙ぐみながらクラスメートに出会えて良かったと感謝の言葉を伝えた後「一つだけお願いがあって、こんな僕ですけど同窓会に呼んでください。で、大人になってからも僕のことを思い出して、僕は何やってるか分かんないですけど、砂漠歩いてシマウマに乗っているかもしれないけど、その辺のことを思ってくれたらな、と思います」と話した。

 最後に父親の方を向いて涙声で「こんな僕ですけど、育ててくれて大変ありがとうございました。これからもよろしくお願いします」と語って締めくくった。

 卒業後の4月、女子生徒は佐世保市内で1人暮らしを始めたが、進学した高校には1学期中に3日しか登校しなかった。


なんか、6年以上前に書いていた文章が今回の事件をきっかけに
「そういうことだったのかぁ」って思えてきました。
ようやく、やっとです。