第17条「四谷先生」・第18条「平田残雪」・第19条「夜の蝶」感想(コミックス3巻収録):「不帰梟」と「甘さ」の理由、そして2つだけしかなかったお膳のナゾに迫る

お久しぶりです、こんにちは♪
ジャンプを買わなくなって久しい今日この頃ですが、某所にお邪魔して書込みした内容の整理がついたのでこちらにも載せてみることにしました。
ムヒョロジ感想はあと2つほど、以前にお知らせした「第78条「運命」感想(ジャビン32号収録):彼は本当に哀しい最期を遂げたのか。そしてムヒョは、友をどう救おうとしているのか」と、*1はてなの御大であらせられるYUKIMI様の1578. 少年漫画の「死」というリアルについて - Snow Swallowに対する反論を書くつもりです。

「不帰梟」の刑の理由――何の為の執行だったのか

六氷が平田残雪に「不帰梟」の刑を執行した理由はなんでしょう。四谷阿部之の依頼だから?「罪は罪*2」だから?
それとも、何か別の理由があるのでしょうか。


牧波さんの考えを述べたいと思います。
まず考えてみたのは以下の部分です。

私はここ半年 一枚も原稿が書けとらん…
――半年はおろか……!! 五年もだ……!!
そんなこんなで世間からも忘れられ…
出版社からも見放された孤独な私は
『夜の蝶』に すがりついたんだぞ…!!
夜な夜な仕上がってくる名作を 黙って自分の物にしたのだ……!!*3

そうです、つまり……

ひとつめの可能性――「なりかわり」を行ったのは四谷阿部之だった

ということになります。
平田残雪が四谷阿部之に「身を模し*4」『夜の蝶』を書き続けたのと同じように、四谷阿部之もまた平田残雪の『夜の蝶』を「黙って自分の物に*5」していました。

そして大ヒットし大金を手にして
他人の作品で名声を得たことに罪悪感を感じ不安になり
最終巻が書き始められる前に魔法律家を呼び
オマエが長い長い月日大事にしてきた思いを
いっぺんに奪おうとしたんだ…!!!*6

これだけのことで考えれば、ムヒョが執行した理由は「四谷が残雪の『夜の蝶』を四谷自身のものにすることを阻止するため」ということになります。
しかし牧波さんは納得がいきません。なので、別の理由を考えてみることにしました。

ふたつめの可能性――平田残雪の「思い」が「罪」によって消されないように

――もう、私の自我がそう長くない事は分かっていた…*7

ムヒョが残雪を執行した理由。牧波さんはこの残雪のひと言が全てを表していると思います。


このまま残雪が現世に留まり続けていれば、必ず悪霊化してしまう。
残雪が悪霊化すれば、必ず四谷に手を掛けることになってしまう。
四谷が死ねば「夜の蝶」の書き手がいなくなり、永遠に未完となってしまう。


「夜の蝶」を完成させるために現世に留まり続けた残雪にとって、「夜の蝶」が未完となってしまうことはなんとしても避けたいはずです。


しかし、夜の蝶はようやく最後の1/3に差し掛かったところであり……
かといって、残雪の悪霊化までに残された時間もなく……


結局この状況のなかでの最善の手は、残雪が四谷を殺めぬ内に残雪自身を現世から隔離することだったのだ……と牧波さんは考えます。
そして残雪が「最終巻の執筆は四谷殿にと私は決めていたのだ…*8」よ考えていたから。
残雪が本当に「四谷殿…最終巻の内容はそんなアナタにしか書けないんだ…*9」と考え、四谷に「夜の蝶」を託そうとしていたからこそ、「これでいいんだ……なぁ霊能者*10」と何の抵抗も無くこの世を去ることが出来たのだと思います。
「四谷殿が必ず『夜の蝶』を完結させてくれる」という希望を持って。

*1:書こうとしていたことは第76条「霊沸浄化」・第77条「パンジー」感想(ジャビン30・31号収録)追記:彼が一番欲しかったもの - こんぶダイアリー 武藤三法流華睡葬で往きたい人のブログ第59条「蠢動」感想(ジャビン12号収録)追記:エビスの回想より考える、円と黒鳥の心の闇 - こんぶダイアリー 武藤三法流華睡葬で往きたい人のブログですでに述べていました;

*2:第18条「平田残雪」p.14

*3:第19条「夜の蝶」p.10-11

*4:第18条「平田残雪」p.11

*5:第19条「夜の蝶」p.11

*6:第19条「夜の蝶」p.11-12

*7:第19条「夜の蝶」p.12

*8:第19条「夜の蝶」p.12

*9:第19条「夜の蝶」p.12

*10:第19条「夜の蝶」p.15