第67条「完全なるもの」感想(ジャビン20号収録):ムヒョがあの人を救おうとする理由

ぎゃー!!ムヒョロジ感想遅れ気味で申し訳ないザマス。先週号は合併号らしいので、なんとか来週までに追いつけるようガンバリますので4946☆


と、いうわけで。この先より本編のネタバレを含みます。御注意下され。

ねぇ ヨイチ



あの見張らしで肩を並べて
大地を彩る緑を見たよね



あの時 口に出していたヘタレ声を
もう一度 聞かせてよ

エス!!今回の回想の雰囲気をぶち壊しにしちゃったよ!
あんまり関係ないけど、今回の扉絵ってどう見てもヨイチ×エンチュ−ですよね。本当は4人いるらしいですが、牧波さんにはヨイチとエンチューしか見えません。腐女子(にんげん)はどうして、こんなに不完全なんだろうね……!


身を呈してロージーを死守した火向

ありがとう!君のおかげで草野は無傷だったよ……!それにしてもなんか最近、ヨイロジ色が強いですね。


「完全なるもの」へのあこがれ

「人は誰もが完全な存在に魅かれるものだ*1」というトーマスのセリフは、私たちにも当て嵌まります。
人は古くには神仏(宗教)に、そして近代には自然(科学)に対して、「完全」という拠り所を求めてきました。「神サマが作ったものだから完全なのだ」「自然が作ったものだから以下略」、と言った風にです。
しかし、しっかりと事実を突き詰めていけば。私たちが「完全」だと信じているものが、実はただの思い込みに囚われた「甘ったるい妄想*2」であることに気付かされます。
私たちがあたりまえに思っているものこそ、実は「妄想」かもしれないのです。さて、それでも「妄想」の世界に気付かぬフリをし続ける人はどれだけいるのでしょうか……。
おっと話が逸れました。


不完全な人間社会――オール・オア・ナッシング

「光が平等に全部の葉に行き渡る様にできてるんだって――*3」植物の葉の並び方を「完全」であると言った様子から、(少なくと当時の)円が「不完全」と考えていた人間社会を推察することができます。
まぁ、そんな前置きを置かなくても。円の考えが「光が平等に行き渡らない、バラバラな人間社会=不完全」だということは本編を読めば解りますよね。そしておそらくは、円自身が「自分(や自分の親しい人)は光を遮られている存在だ」と感じていたということも……。


こうやって考えますと。円やトーマス(そしておそらくはティキも)が、禁書を用いて「協会だけでなく 人という人を巻きこもうと*4」している理由もだんだんと見えてきます。彼らの狙いのひとつには、「不完全」な人間社会を消そうとする思いがあるのでしょう。
そしてその思いは、円と黒鳥を隔てる、唯一にして最大の境界線なのでしょう。第59条「蠢動」p.16にて、黒鳥が円に向けた哀れみの視線は、この境界線から生じているのだと思います。禁書に望んでいるであろう円と黒鳥の思いの差異(円は六氷を破滅させるため、黒鳥は母親を甦らせるためだと、牧波さんは考えています)は、皮肉にも禁魔法律の染まり具合にも現れています。


さらに「魔法律は余りに不完全――この魂のように*5」と、トーマスが禁魔法律*6を使って己の魂*7を削っている様子を見ますと。彼らの「完全なるもの」に対する執着が見えてきます。彼らにとって「不完全」なものは、存在価値がないばかりか、彼らの目指す「完全なる」世界にとって邪魔になります。だから彼らは「完全」なもの以外を排除しようとするのでしょう。


彼らは世界が「完全」ではないからこそ、跡形もなく壊そうとするのです。


ムヒョが円を救おうとする理由

「禁魔法律に染まってしまった事に 気付けなかった 救えなかった*8
トーマスは上記のように、ムヒョが「責任を感じている*9」から円を救おうとしていると言いました。第12条「狂気」にて、火向がロージーに語った話を読み返すと、トーマスの言っている事が的を射ているような気がしてきます。
しかし牧波さんは、トーマスの考えに「異議あり!」の立場だったりします。なぜならトーマスの考えは、これまでムヒョが行ってきた執行における際の姿勢と一致しないからです。これまでの執行を見れば、ムヒョは当事者たちの現在の状況をすべて受け入れた上で、できるだけ当事者たちが納得できるように図っています。
ムヒョが見ているのは「過去」ではなく、「未来」です。ですから、ムヒョは円の「過去」のためではなく、「未来」のために救おうと考えているのではないでしょうか。


おそらく、彼は世界が「完全」ではないからこそ、これ以上失われないよう、大切に守ろうとするのでしょう。

*1:第67条「完全なるもの」p.14

*2:第67条「完全なるもの」p.19

*3:第67条「完全なるもの」p.18

*4:第63条「嵐の前」p.20

*5:第67条「完全なるもの」p.14

*6:完全なもの

*7:不完全なもの

*8:第67条「完全なるもの」p.1

*9:第67条「完全なるもの」p.1